こんなおかしな泥棒がいる
vol.20 『セキュリティのルーツを探る』
動物の本能の一つとして、"身を守る本能"がある。人は、服を身につけ外気から身を守り、雨風から身を守るため周囲を屋根や壁で囲んだ"家"に住み、そして生きていくのに必要な財産と自らの命を守るため、そこに鍵を掛けた。
さらに大きな見方をすれば、城壁で周囲を囲んだ都S国家・・・。古代ギリシャでは、紀元前8世紀頃から山あいのあちこちに小さな都S国家(ポリス)がつくられた。他民族からの侵略に、人の住む集団が支配者の力によって、"身を守った"わけだ。
英語の天国・楽園を示す言葉を"パラダイス"と表わすが、この語源は古代ペルシャ語のペリ(周囲)=ダェザ(形づくった)で、周囲を城壁などで囲んだ内側という意味である。"形づくった""周囲"の内側がパラダイスというわけだ。パラダイスこそ、外敵から命を守り、盗難から物を守り、プライバシーなどの身を守る思想の原点といえるのではないか。
現在では、国家にしろ、都市にしろ、城壁のような物的なもので周囲を囲む必要性は失くなったが、しかし、個人もしくは家族という単位が持つ"城壁"は残されている。しかし、その"城壁"は、家・錠前だけでは実現されず、20世紀末の現在、エレクトロニクスを駆使したセキュリティ機器が使用され、新しいセキュリティの時代への転換期を迎えている。